ATTに関する記事を読んでわからなさすぎたので考えたこと

AppleのATT(App Tracking Transparency)に関する記事を読んでよくわからない所があり、それについて考えたことを残しておこうかと思います。
先日、知ったCMもわかりやすく、よくできていると思ったのでついでにそれも。

youtu.be


記事ではアプリのATTの対応状況などが報告されています。それとともに考察もありました。
その中で下記の部分がわかるようでわかりませんでした。


品質の悪いアプリはIDFAの取得が困難になり、結果的に淘汰されていく可能性があります。一方で、良い顧客体験を提供するアプリに対しては、ユーザーがトラッキングを許可する可能性が高いというデータも出てきています 。

つまり、マーケターにとって今回のアップデートは、ユーザーとのエンゲージメントを醸成する戦略を構築し、ユーザーとの関係をこれまで以上に密接なものにしていく絶好の機会と言えます。そして、他社との差別化を行う最高の機会として、プライバシー保護を重視する観点と既存のモバイルエコシステムの共存に取り組んで頂きたいと思います。


私の理解では、よい顧客体験を提供すればユーザーはトラッキングを許可しやすい。許可するユーザーは顧客体験を良いと判断している。よい評価をしているのでエンゲージメントも高い。よってよりよい顧客関係が築ける。したがって、エンゲージメントを醸成できる戦略を取り、良質な顧客体験を提供し、許可を得られれば、結果的に顧客との関係が良くなる、だから、新しい仕組みに合わせつつ、これまでやってきたことを維持するとよい、ということかな、と。

中でも私がよくわからないのは、まず、よい顧客体験を提供しているアプリはどうして許可されやすいのか、ということ。
もう一つは、なぜ、トラッキングの実行には許可を取らないといけないこの機会が顧客との関係をより密接なものにしていく好機なのか、ということ。

この記事にもありますし、私自身もそう思うのですが、そもそもユーザーはトラッキングを良しと思っていないのでは、と考えます。
それなのに、トラッキングを許可するのはなぜなのでしょうか。
よい顧客体験を提供するアプリにはトラッキングが許可される可能性が高いそうですが、これは、よい顧客体験ができることと許可のタイミング、両者の時系列での関係をどのように定義して得たデータなのでしょうか。
良い顧客体験を受けられているから許可したのか、よい顧客体験を得るためには許可しなければいけないから許可したのか、どちらなのでしょうか。あるいは他の理由でしょうか。

私からすると、多くのユーザーは許可せずとも、よい顧客体験を体験できているなら許可しないのではと考えます。そもそも許可したくないでしょうから。
でも、許可する。なぜ?
許可するユーザーのメリットは何なのでしょうか。
私にはよくわかりません。

もし、よい顧客体験を受けるために許可が必要なのであれば、許可したユーザーはそのようなアプリやアプリ提供者によい印象を持つのでしょうか。
仕方なく許可したユーザーとよい関係が築けるのでしょうか。

今回のAppleの対応で、トラッキングされないので利用者は満足し、エンゲージメントが高まり、顧客との関係が良くなるので好機、ということなら納得感はあります。
しかし、そこに許可を得ることが絡んでくると顧客関係が向上する理由がよくわからなくなります。

ラッキングによって得たデータを分析し、その結果から顧客体験向上につながる施策を実行できるから関係がよくなる?でも、これでは、そもそも許可されないでしょう。よい顧客体験が提供できていないのですから。

最初からよい顧客体験を提供できているなら、トラッキングする必要はないでしょう。良い体験ができているのですから顧客は満足し、エンゲージメントは高くよい関係が築けているのでは。

また、よい顧客体験ができているから許可をするのなら、エンゲージメントは既に高く、顧客との関係もよいのではないでしょうか。そこでわざわざ許可を取りに行くのは関係悪化の引き金になるかもしれません。

より一層、顧客体験を向上させるため、という事がありそうですが、トラッキングが顧客体験向上に寄与するのか不明です。それに、この場合、ユーザーとの関係云々というより、トラッキングで得たデータを顧客体験向上に活かすこと、この点に対するユーザーからの理解を得ることが重要などとなるのではないでしょうか。

あるいは、エンゲージメントを高めることで、許可が得られるようになり、それで顧客との関係をしっかり構築していける、ということかもしれません。しかし、エンゲージメントが高いと許可を得やすいのかどうかは不明です。高いエンゲージメントの理由に良い顧客体験の提供はあるでしょうけど、欠かせないのかはわかりません。
ラッキングできない中、エンゲージメントを高めて顧客関係を向上させられれば競合に対して優位になる、ということもあり得ます。ですが、この場合、トラッキングできることが、よい顧客関係を築くための十分条件でもないでしょう。もし、トラッキングがよい顧客関係構築に必要不可欠なら、今回のことでエンゲージメントは低くなり、必要なのはエンゲージメント醸成戦略ではなく、エンゲージメント維持戦略が重要、となるのではないでしょうか。

何が何やらよくわからなくなってきました。


許可を得なければ今まで通りにできないことが出てきて大変なので、エンゲージメント醸成は許可を得ることに積極的になってもらうための方便なのでしょうか。
アプリを提供する企業は許可の取得方法、どうしてユーザーが許可をするのかをよく考えないと、ふつふつとユーザーに不満を醸成させてしまうのではと感じます。

今後はどういう許可の取り方をするのか、よい顧客体験が欲しければ許可をしろ、と脅迫めいた方法を取るかどうかで、企業のHPに書かれているであろう、私達は顧客を第一に考えます、的なことが口先だけなのかがわかりそうです。ということでは、たしかに記事通り絶好の機会なのかもしれません。
今回の記事をどういう風に理解するのが適切なのかわかりませんが。