いい加減、もしくは悪質かもしれない仕事のお手本

いい加減な仕事のお手本を見つけたので残しておこうかと思います。もしかすると一つは悪質な仕事かもしれません。

適当な仕事というのは次の記事です。

www.itmedia.co.jp


一見するとなんでもない記事です。
でも、人によってはすぐにわからない点が出てくるでしょう。

私は最初のグラフについて説明が足りないように感じました。 足りない説明とは、グラフのn数、もしくはどういう人の結果なのかということです。
最初のグラフを見ると課金額を聞いた結果だとわかります。ここに0円が無いということはソシャゲに課金経験のある人に絞られているのかな、と思えますが、その説明がありません。
となると、1万円以内に0円の人が含まれているのか?と考えられますが、それはないと思います。0円と1円以上課金したことがある、の違いは大きいと思います。また、どれくらいの人が課金しているのかを確認するための質問でしょうから、課金していない人がどれくらい存在するのかも重要な意味があります。それを1万円以内に含めてまで、わからなくさせる理由がわかりません。
そしてさらに混乱させられるのは、グラフに記載されている割合を足し上げると100%になることです。0円が1万円以内に含まれていないと考えると、400人の回答者全員が課金経験者ということになります。しかし、400人の回答者全員が課金経験者ということは考えにくいです。もしそうだとすると日本の20代30代は全員ソシャゲに課金していることになります。さすがにそれはおかしいでしょう。そうなると、この質問は400人の内の課金経験者のみが回答していることになり、このグラフの結果がどういうものなのか説明が足りていないことがわかります。

もし、課金経験者のみの結果なら、見出しにある”20代の4人の1人”は、日本の20代の4人に1人ではなく、ソシャゲに課金したことがある20代の4人に1人、となり、意味合いが全く異なってきます。

もう一つ考えられることは、スクリーニング調査を行い全回答者を課金経験者にしている、ということです。ただ、20代の4人に1人が云々という書き方から、日本の20代がどうなのかを把握しようとしていると思われます。そこから考えると、スクリーニングをかけて課金経験者のみを対象にした調査は考えにくいです。

結局、この記事は最初のグラフの分母がどうなっているのか、もしくはこの調査の対象者が何らかの条件のもとに抽出されているのか、肝心のことが抜け落ちているいい加減な記事となります。

こうなってくると放置しているのも気持ち悪いので、大本の調査結果を見ざるを得なくなるわけです。そしてそれが次のリリースです。

strate.biz


このリリースを見ると、最後に”「ソーシャルゲームに課金したことがある方を対象としたアンケート」についてをまとめました。”という一文があります。
ということで、今回の調査は、私はないだろうと考えていた、ソシャゲ課金経験者のみを対象者としたものでした。
従って、最初の記事の見出しはソシャゲ課金経験のある20代の4人に1人、が適正でしょう。
リリースの20代の24%、もソシャゲ課金経験のある20代の24%、が適切だろうと思います。

自分たちの主張したいことを言いたいがために問題のある調査が行われることは良くあろうかと思います。
今回の調査はその中でも結構悪質だなと感じます。
リリースで”20代の”と、何の条件もない単なる”20代”と記載しています。調査を行ったのですから当然、課金経験者の内の20代、ということをわかって書いているのでしょう。しかも、このリリースでは、サンプルサイズなどの調査概要がリリースの最初の方に記載されているのに、調査対象者の条件は調査概要とは別の所、リリースの最後です。これは、閲覧者をミスリードしたいということでしょう。
最後に抽出条件だけを記載しているのは、何か突っ込まれても抽出条件は書いてある、きちんと読まないお前が悪い、ということで逃げられるということでしょうか。
スリードする気がなくてこれだとしたら、何をどう考えてこのようなリリースを作っているのか私にはさっぱりわかりません。

一方、リリースがおかしいからといって記事を書いたライターが気づけないのも仕方がない、とも言えないでしょう。データが使われた記事を書くわけですからこれくらいのことには気づけないといけないでしょう。

最初は記事を書いたライターがいい加減でそれを載せる媒体社もいい加減、と思っていました。
しかし、結果はさらにリリースを出した所のいい加減さなのか、データリテラシーの無さなのか、あるいは他の理由なのかわかりませんが、手抜き仕事の連鎖があったということでした。