睡眠と生産性の話はぼんやりしていると丸め込まれるかも

本日は、ふと目に止まった下記のツイートからダラダラと考えている内に、睡眠と生産性との関連についてぼんやりしていると良いように丸め込まれるかも、と感じたことを書こうと思います。

研究者なら閾値が気になる、とのことで、研究者とはそういうものなのかぁ、と思ったところからダラダラと考え始めました。

まず、具体的には何についての閾値なのだろうと、表示されている散布図を見てみました。
ツイートでは6時20分と7時10分、とあるのでそれは何のことだろうと見てみると、「平均」のことかな?と考えました。それから内容は睡眠時間と生産性の関係性ということも併せて認識しました。
しかし、ここでその関係の閾値ってどういうもの?どういう状態?とも思いました。どこかでパキッと分かれるってこと?などなど気になりました。
さらに、考えると、そもそも平均なのだから分母が変われば変わるでしょう。そうだとすると6時20分や7時10分でもなくなるのでは?と思ったわけです。
さらにさらに、そもそも平均以下は日本だけ?イギリスも生産性は平均以下のようですが、どうなってるの?と。日本が低すぎて平均以下が日本だけなの?とかとか。
さらにさらにさらに、平均以上だけを見ると、相関関係があるようなないような気もします。それにアメリカは他の対象国とは違う理由がありそうにも思います。
さらにさらにさらにさらに、日本だけがこれほど低いのだとすると、睡眠時間ではない、別の理由があるのではとも考えてしまいます。

そこでちょっと検索して元データかもしれないものを見たところ、一人あたり生産性の方は38カ国のデータあるようですが、睡眠時間のデータが集計されている国が少ないようでなんとも言えないなと思いました。
睡眠時間のデータがもっと多くの国でも取れるようになると散布図の結果も変わるかもしれません。

それにです、よくよく考えると、そもそも労働生産性が高い、ということは効率もよく労働時間が短い可能性も考えられます。そうだとすると、労働時間が短くなったために、睡眠時間を増やすことができ、その結果、生産性が高い国は睡眠時間をより長く取れる、ということも考えられます。
そうであれば、記事の見出しも「眠れない日本、生産性低く」ではなく、「生産性低い日本、睡眠時間取れず」の方がふさわしいのかもしれません。
記事の中では、ワーク・ライフバランスの社長が「睡眠を削って頑張った結果が企業としての成果につながっていない」とおっしゃっていますが、もしかすると「企業が成果をあげるには睡眠を削らざるを得ない」とも言えるのではないでしょうか。

また、記事には売上高経常利益率と睡眠時間の関係性もありましたが、これもどうなんだろう?と思います。

睡眠時間別売上高経常利益率のグラフ
生産性を言うなら経常利益率より営業利益率との関係の方が納得感があるように思います。経常利益ということは本業以外の利益を含むわけですが、それには直接的には関わらない社員も多くいるのではないでしょうか。
さらに、企業によっては様々な業務を他の企業に依頼して進めるところも多いのではないでしょうか。そうであれば、依頼し、協力会社に働いてもらうことで、その分、自分たちは残業をせずに済むわけです。その浮いた時間を睡眠に回すこともできるでしょう。こうして効率化していると、睡眠時間が長いから利益率が良いのではなく、効率化されているから長い睡眠時間が取れる、なるでしょう。
こういうことは企業規模や業種などで見た方が良いのではないでしょうか。

それから、冒頭のツイートの中で「詳しいのがあった」と、どなたかが紹介されていましたが、詳しいものと言うか別のものでは?というものも見ましたが、こちらも私にはくわかりませんでした。
まず「年齢別平日の睡眠時間と生産性」の折れ線グラフ。見方がよくわからないのですが、恐らく、睡眠7時間台の人の生産性を0として、他の睡眠時間の人の生産性を比較しているのだと思うのですが、その場合、これ、なぜ7時間台を基準にしたのでしょうか。疑問です。6時間台だと1時間多い7時間台に生産性が下がる年代があるからでしょうか。
そもそも生産性とは何なのかよくわかりません。日本生産性本部の調査結果のように何らかの金額だとしたら、若い人が関わる業務の規模は小さいことが多いでしょうから低いのかもしれません。
また、業務内容による影響もあるかもしれません。若い人はやらされている、とか本人にとっては地味に感じているような業務に関わることが多いかもしれません。そういう業務では、時にウトウトしてしまったり、身が入らず生産性が落ちるのかもしれません。

パス解析?の結果もありましたが、ここでは「sleep disturbance」と睡眠障害となっています。睡眠障害と睡眠時間の長短は違うようにも思います。
それにその睡眠障害も「productivity loss(生産性損失)」には心身のストレス反応(PPSR)の方の影響が強い、とあります。
とにかく詳細不明なのでなんとも言えず、よくわかりません。

とはいえ、寝不足が良いとは思いません。効率の悪いことでも睡眠不足でない方が睡眠不足よりうまくできるでしょう。
ただ、睡眠時間を増やせば生産性が上がる、諸外国との競争力が上がる、というのは早計かなとも思います。
日経の記事ではスリープテックのこともありましたが、スリープテックの訴求として睡眠の改善が生産性の向上、なんて言っていると本当?と疑問を持った方が良いかもしれません。
睡眠時間を確保したり、睡眠の質を上げて生産性を上げるのは、根性論と変わらないように感じます。先のワーク・ライフバランスの社長の言葉を拝借すると「睡眠の質を上げて頑張った結果が企業の成果につながった」であり、これは、企業の成果を上げるために仕組みなどを改善したのではなく、単に個人が頑張っただけのことになりますから。
睡眠の問題に原因があるのではなく、睡眠に問題を生じさせるものが原因、ではないでしょうか。
睡眠と生産性の関係はもっと色々な視点から見るようにしないと安直な結論に飛びついてしまうのかもしれません。