ラグビーのにわかファン増加に感じたこと

ラグビーワールドカップ、久々にハラハラドキドキしながらスポーツを見た気がします。
このラグビーは何だかいくつかの関係者にとって今までのことを考え直す機会になるようにも思ったもので、それを残しておこうかと思います。

Twitterで上記のような、タレントを出さなくても視聴率が取れる、といったことを書いてメディアにこれまでのスポーツ中継のあり方への批判をしているツイートをいくつか見かけました。
私もタレントや大げさに飾り立てた表現や話は余計に感じるので、確かに、と思います。
ただ、今回のラグビーの盛り上がり方からは単にメディアの中継への示唆だけでなく、タレントやそもそものスポーツ競技の関係者も色々と考え直す時期なのではと感じました。

メディア(テレビ)

今回、ラグビーの中継でタレントの存在をそれほど感じませんでした。Twitterでも見かけたように、タレントが居なくても皆の注目を集められたのではと思います。
それは、日本のラグビーが世界一を争うような強豪に勝てるほどの強さがあることが何よりの理由でしょうが、ラグビーそのものをしっかり伝えられたことも重要だったのではと思います。
そうであるのなら、今後、競技そのものをいかに伝えるのか、ということに力を入れることで同様の成功を得ることも可能なように感じます。

これからは様々な映像技術で今まで見たことがないような映像で競技を伝えることも可能かと思います。
今回、NHKキヤノンでしたでしょうか、たくさんのカメラで捉えることで、日本やオールブラックスのプレーをテレビ中継とは異なる映像で解説していたかと思います。あるプレー時の選手の目線などから、いつの時点で誰が何を判断し、どう動いていったのか、といったことを解説していたように思います。
映像以外にも、ルールやプレー、競技にまつわることなど、楽しむために必要なことを充実させたり。

また、今回はラグビーワールドカップラグビーフットボール協会、さらには選手自らが、色々な情報をTwitterで流していたかと思います。
これが今後も行われると、たとえ経験者とはいえ、タレントが興奮している様を映しつつ、大した解説も無いようなものでは、面白いとは感じてもらえないのではないでしょう。より面白いものがあるわけですから。このままではテレビは単に映像が見られるものが他にないから仕方なく利用するもので、他の手段が出てくれば、すぐに見捨てられるのではないでしょうか。
テレビはスポーツだけを放送しているわけではないのでタレントとの関係維持も重要でしょうから、これまで通り何も変わらないだろうなと思います。しかし、このご時世に何時代なの?的なことはすぐに見透かされ、さらに自分たちの地位を落としていくことになるのではと思います。
安直にタレントを起用して、感動話に持っていってアナウンサーに大げさな表現をさせていれば良い時代ではないのではないでしょうか。
皆がラグビーを見た理由、皆が見たいスポーツ中継とはどのようなものなのか、しっかり検討していかないとテレビの存在がどんどん軽くなっていくように思います。

タレント

タレントがスポーツ中継に起用されるのは、競技だけでは惹きつけられない無関心層も惹きつけよう、ということが一番の目的かと思います。
今回のラグビーでは”にわかファン”が急増したようですが、それはラグビー無関心層を惹きつけられた結果でしょう。そして、今回、他のスポーツ中継と比べて、それほどタレントの存在感を感じませんでした。つまりは、タレントによる無関心層誘引の影響はとても小さかったのではと思います。

今までは、タレントの皆様は、経験者だから、とてもあるスポーツが好きだから、あるいは、単に人気だから、といったことで、人寄せ役としての仕事を得られていたのでしょう。ですが、もし、今回のラグビーのようにタレントパワーがなくても多くの人を惹きつけられるのであれば、タレントにお金を使うのなら無関心層を引きつける上で重要なことに使う、ということになるのではないでしょうか。

それに、タレントによる人寄せが行き過ぎると、スポーツ中継までもが見てもらえなくなる可能性もあるのではないでしょうか。
タレントによって競技に無関心な人を惹きつけられるということは、タレントにしか興味のない人も惹きつけることになります。タレントにしか興味のない人が多くなったりすると、タレントではなく競技そのものに興味がある人に悪影響があるかもしれません。
どちらの層を大事にしないといけないのかは考えるまでもないかと思います。

タレントの皆様はこれまでどおり、単なる人寄せの役割で行くのか、真の主役である選手や競技そのものの魅力が競技関心層はもちろん、競技無関心層までも惹きつけられる中でも通用する、何らかの役割を見つけたり、影響力を身に付けたりするのか、転換点が突如現れた様な状況になったのではと感じます。

様々な競技の選手や関係者

ラグビーのにわかファン増加の大きな理由は、ラグビー日本代表チームの強さは当然のことながら、競技そのものの面白さや、紳士のスポーツと言われるような良いイメージ、ルールやプレーの丁寧な解説、など競技と関連の強いことの影響だったのではと思います。

タレントや感動話、大げさな表現、そういったものと併用される競技は、それだけ、競技そのものでは人を惹きつけられない、主役としては力不足、と判断されている、ということではないでしょうか。

選手や競技、関係者やファンにとって、それで良いのでしょうか。 自分たちこそが主役であり、自分たちこそがコンテンツであり、そのコンテンツには大いに力があることが今回、改めて分かったのではないでしょうか。さらに、皆が見て喜ぶのは自分たちであることも分かったのではないでしょうか。
今はSNSで自ら文字や画像、動画でコミュニケーションが取れる時代です。SNSは万能ではないですし、それほど影響力も大きくないかもしれません。また、パブリックビューイングなど見る側も変わっているかと思います。この様な中、今までとは異なるコミュニケーション方法をマスメディアやオンライン・オフラインも含めて考え、実行し、変えていくことが可能な時期のように感じます。